紙の特性をを深堀してみる!
製本は紙を切ったり、折ったり、貼ったり、束ねたりして、用途に応じた形にしていくお仕事です。ほぼ毎日紙に触っているわけですが、反ったり、伸びたり、波を打ったりして、紙の特性に泣かされることがよくあります。
では紙のことを我々はどのくらい知っているのでしょうか。
紙の原料は木材です。この木材を細かく砕いたものをチップと呼びます。このチップから繊維だけを取り出し、脱水、漂白したものがパルプとなります。このパルプに薬品を添加し薄く延ばし、脱水、乾燥、プレス処理され、厚さを均一にしたものが紙となります。さらに用途によって紙の表面に塗工し、印刷しやすくした紙などが作られます。
製本で注意しなければならないのが紙の目です。紙の製造過程でパルプの繊維が進行方向に向かって配列され定着し、紙の目となります。断裁された紙には縦目(紙の長編と並行)と横目(紙の短辺と並行)があり、特性があります。
①紙目に沿っては裂けやすく、逆目だと裂けにくい。②紙目と直角方向に伸びやすく、縦方向に伸びにくい。③紙目に沿って折りやすく、逆目は折りにくい。
ですので使い方を誤るとこんなことになってしまいます。
逆目と知らず、二つ折りを折ったら、折が揃わずばらついてしまった。背割れを起こしてインクが剥げた。逆目の本文を無線綴じにしたら開きが悪く、無理やり開いたら壊れた。喉側にしわが発生した。逆目の見返しを糊付けしたら浪打してゆがんだ。などなどほかにもいろいろ・・・・
紙の伸びにも注意が必要です。紙は環境により常に吸・脱湿しています。急激に乾燥すると一時的に紙は縮み、時間の経過とともに空気中の水分を吸収し伸びていくという特性があります。
オフセット印刷したものとオンデマンド印刷したものを混ぜて製本し、しばらくたつと紙の伸び率が違うため、でこぼこした本になってしまったり、表紙は枚葉印刷で本文は輪転機で印刷したものを製本した後しばらくすると表紙より本文が長くなったりすることもあります。これは印刷方式の違いにより紙が加熱され縮んでしまうことが原因です。
その他、紙の厚さにも注意が必要です。紙を厚くすると強度は上がりますが、硬くて開きにくくなったり、折ったときに背割れが発生したり、無線綴じでは本文の中抜けが発生したり、加工時に傷がつきやすくなり、マット系の紙はこすれが発生しやすいといった症状も出てきます。逆に紙が薄くなると、シワや切れが出やすい、紙揃えか悪くなる、浪打や反りが発生しやすいなどの症状も出てくるので注意が必要です。
しかし、用紙の決定や印刷方式の決定は印刷前の段階で決まりますので、製本の段階で気づいても遅いのではと思いますが、最悪全部刷り直しになる場合もありますので速やかに報告しなければなりませんね。